玄天黄地

学生時代、箸にも棒にも掛からなかったアホの子が、やっと普通のアホになれるか?

事業仕分けと予算執行調査

現行予算制度の限界?

 次年度の事業を当年夏までに企画し要求する仕組みは、当年夏時点での需要予想が次年度末(すなわち1年半後)まで大きく外れないことを前提条件としている。しかし、変化の早い近年においては、そういう悠長な話が通用する余地は年々減少している。
 何か事件が起きると、緊急的な対応が求められるものと推定する。国会議員も事件事故に際して緊急対応を求める場面は多い(少なくとも、激甚災害指定を求める声は、地元の要望とも合致しているから、合法的な緊急対応の最たるものであろう。財務省は「どこにそんな余剰資金があるのか」と考えるのだろうけど)。実際には、事故ではなく、前年夏の見通しが甘かったために、当該年度になって抜本的な見直しを求められるケースも出てくるはずである。事故の場合も、緊急的な対応までは求められないとしても、予定の変更が必須になるケースは多々あるものと推定される。
 現実には、全ての事態を予想することなど不可能であるから、事故のリスクまで想定した必要額の期待値を要求している役所が多いのではないだろうか。機動的に政策を発動するためには、リスクヘッジが不可欠だと思われる。もちろん、リスクの見積もり方は、政策部門と事業部門とではかなり異なるだろうけど。
 さて、事業仕分けが入る場合、無駄な予算を積むことはできない。その一方で、財務省による予算執行調査が各省に入る(各省を縛る)ようになれば、結果として事故や政策的必要性に対応して予算案と乖離した執行を行うことが難しくなる。
 このことを、「無駄がなくなって宜しい」と受け取る国民は少なくないものと考えるが、このことは役所の支出を硬直化させる副作用がある。長妻大臣が苛ついているという報道があったが、案外このようなことが原因だったりするのではないだろうか。

事業仕分けは第四四半期に国会で行ってはどうか

 秋に事業仕分けを行ったところで冬や翌春に事情が変わることもあるだろう。
このことは、リーマンショックが12月や1月に起きていれば、と考えれば明らかである。
 現行制度のように、事業仕分けが入るから無駄な予算を要求しなくなり(あるいは要求できなくなり)、予算執行調査が入るから結果として機動的な支出が難しくなる(支出したとしても、その結果として既存予算の減額執行を行うと説明責任に窮する)とすれば、前年8月の時点での要求案で(1年後の)当年度末まで対応するのは難しいのではないか。また、第三四半期に事業仕分けを行うのは、財務省の査定と平行して行うことになり、二重査定にも見え、不自然である。
 そこで、事業仕分けは1月の1ヶ月間に行うこととしてはどうか。
 財務省は、シーリング枠の範囲内で第三四半期までに査定を行う。この場面では行政刷新会議も口出しをしない。年末にできあがるのは、ある意味で官僚主導の予算案である。その後、1月になると、今度はそれら全体が事業仕分けの対象になるわけだ。こちらは、財務省も各省の官僚も口出しをしない。政治家は、財務省が前年末に作成した予算原案に対して、官僚とは異なるシーリング枠を政治的に決定しておき、少なくともその数字までは切り込むのである。政治シーリング枠が行政シーリング枠よりも高くても良い。その場合は、政権政党マニフェスト予算等に無条件で宛てられることになる。この事業仕分けは、1月末までに終えることとしておく。財務省は、その結果を踏まえて3週間以内で計数整理を行い、2月末までに予算案を作成し閣議で決定する。国会審議は2週間程度しか余裕がないが、政治主導で決定した予算原案であるから、集中審議を行えば年度内に成立させることもできるのではないか。日程的に厳しいようでも、補正予算だってこの程度の日程で実施している筈である。補正予算は、通常予算に比べて政治主導の要素が高いのであるから、同じことであろう。
 但し、時間的制約が大きいことは間違いないので、予算委員会は政争の具にしてはならない。この点は、与野党ともに紳士協定が必要である。

これぞ政治主導

 第四四半期は、完全に政治主導にするため、財務省職員も計数整理以外は担当しない(させない)こととする。また、完全に政治主導とするため、事業仕分けで当該予算の必要性を説明するのは、政務官以上の政治家に限定する。
 もともと、各省の予算は大臣以下の政治家が承認して初めて財務省に提出できるのである。自分が承認した予算の内容だから、仕分け屋にも説明できるはずである。また、官僚たちも、自らが仰ぐ大臣、副大臣政務官が仕分けされてきた予算であれば、諦めて減額要求に応じられるというものである。なんせ、予算が確保できなかった責任も政治家が背負ってくれるのだから。


 どうでしょう。