ベルトモデル(再3
管状近傍とベルトモデル
23日の記事の続き。服部先生の『多様体』(岩波全書)の第6章冒頭の記述を、道路向けに書き直してみたら、こうなった。 元の記述は、任意の次元で成立するように書かれていますが、道路の話なので、二次元多様体(地表面もしくは道路面)に埋め込まれた一次元多様体(道路中心線)を想定して書いています。
(括弧書きは、元の教科書にない記述です)
ーーーー
R2(地表面もしくは道路面)の中の1次元部分多様体M(道路中心線に相当)を考えよう。x∈Mに対してTxM(道路中心線の接線方向、いわゆる縦断方向)のR2における直交補空間をTxM⊥(いわゆる横断方向)とする。M上で定義された正の値をとる連続な関数ε(x)を適当にとり、,
Vx={x+v|v∈TxM⊥,‖v‖≦ε(x)}
とおく。ε(x)をうまくとれば(Mが道路中心線の場合は、一般自動車の最小回転半径を下回らない範囲で曲率半径が設定されるはずであるので、ε(x)として道路の設計曲率半径をとればよい)、x≠yなる x,y に対してVx∩Vy=∅となることが予想される。この予想は実際に成立することが証明される(不成立なら、曲率半径がもっと短いことになる)。
V=∪x∈MVx⊂R2は、R2におけるMの近傍である。
一方、Mの法ベクトルバンドルN(M)は、TR2|M(地表面もしくは道路面の全ての接線で張られる面のうち、接点が道路中心線上あるものに限定したものに相当)の部分バンドル
TM⊥={v∈TxR2|M | v∈TxM⊥}
と同一視された。上の関数ε:M→Rに対して、
TM⊥(ε) ={v∈TxR2|M | v∈TxM⊥,‖v‖≦ε(x)}
とおくと、TM⊥(ε) とVとは v → x+v により1対1に対応する。これは、x≠yに対してVx∩Vy=∅ であったからである。いわば、VはMの法バンドルをMのR2における近傍として実現したものと考えられる。
このような近傍Vを部分多様体Mの管状近傍という(Vは道路中心線Mに対応するベルトモデルとなる)。
任意の C∞多様体N の C∞部分多様体M に対して管状近傍が存在し、しかも本質的には一意であることは、管状近傍定理で保証される。したがって、道路中心線の位置に多少の誤差があったとしても、実際の道路区域を対応する管状近傍として定式化する場合に一意性が保障されるので、道路中心線(一次元多様体であって一次元複体)と実際の道路区域(ベルトモデル)とは一意的に対応するのである。
また、道路中心線に対して3次元の管状近傍を考えるならば、それは道床+路面上空間を含むようなトンネル状の空間として得られるであろう。路面で区切った縁付きの多様体は、自動車通行可能な3次元チューブとして得られるのである。