玄天黄地

学生時代、箸にも棒にも掛からなかったアホの子が、やっと普通のアホになれるか?

煙突効果

 はじめに、今回の水害で被害に遭われた方々に心よりお悔やみとお見舞いを申しあげます。


 今回の台風は、中心が日本海に抜けた4日朝以降も大雨が降り続いた点で特異だったと思う。専門家ではない私が、あまり憶測でモノを言うのは良くないと思うが、どうしても解せない点が一つある。
 それは、偏西風の効果について殆ど誰も言及しないということだ。


 先週後半から今週にかけて、偏西風の位置は殆ど変わっていない。朝鮮半島から日本海北部を通って北海道を横断し、千島に沿って吹いている。台湾の北西方で熱帯低気圧に変化して消滅した台風11号も、この偏西風に乗って暖かい湿った空気の塊がカムチャッカ半島に東まで運ばれ、そこで温帯低気圧になっている。


 台風12号北太平洋沿海州の2つの高気圧に行く手を阻まれたことになっているが、実際には偏西風にどんどん暖かく湿った空気の塊をはぎ取られて勢力を落としていたはずだった。実際に、台風の西側では積乱雲の密度が圧倒的に低かった。


 では、なぜ、紀伊半島にあれだけ雨が降ったのか。その答が天気図にあるように思う。



 これらの天気図は、9月4日(日曜日)の早朝から午後までのものである。一番上の午前3時の天気図で、既に台風の中心は日本海に抜けている。しかし、1000hPa の等圧線は、四国沖にべったり広がっている。1006hPa の等圧線に至っては、後に台風13号になる熱帯低気圧も含み、日本の遥か南の海上まで広がっている。
 恐ろしいのは、一番下の天気図(9月4日午後3時のもの)で、1004hPa の等圧線が最も南に延びている。
 これらのことは何を意味するか。


 台風は反時計回りに風が吹く。これらの天気図からは、紀伊半島上空を北に向かう空気の流れが読み取れる。偏西風がなければ、これらの風は反時計回りに台風の周りを回って、一周して戻ってくるだけである。
 ところが、台風の北がわまで来ると、強い偏西風が吹いている。その結果、台風の東側を北上した空気は、そのまま北東方へと流れ去ってしまう。台風の西側を南下してくる空気の量が足りず、台風の南側は低圧帯になってしまっているわけだ。


 しかも、台風の東側は、偏西風に吸い取られるように、どんどん北向きの空気の流れができる。日本の南にある暖かく湿った空気が、偏西風のせいで、どんどん北上し、紀伊半島に大雨を継続的に降らせつつ、偏西風に乗って流れ去っていく。


 まるで、風の強い日に煙突が勢いよく排煙するかのように、紀伊半島は「暖かく湿った空気の継続的な通り道」になったとしか考えられない。

 その結果、日曜日の昼間には、日本の南に広範囲に低圧帯ができてしまった。空気が紀伊半島上空の「煙突」を通ってどんどん日本海へでてしまった。


 こうして、台風が弱まっても気圧配置に大きな変化がなかったために、この煙突効果は長時間継続し 1800mm もの大雨になったのではないか。