玄天黄地

学生時代、箸にも棒にも掛からなかったアホの子が、やっと普通のアホになれるか?

QuantumGIS で武蔵−相模の国境をトレースしてみた

 数日前に、twitter 上で相模国武蔵国の国境がどこを通っているか、という話が話題になった件。

 議論の概要は、@niyalist さんが toggeter でまとめて下さっているので、そちらを御覧頂くとして、ここでは要点だけ記しておく:

  1. 境川の上流及び中流域は、古代、武蔵国相模国の国境だった
  2. 国境は、境川中流域(鶴間付近)で現在の都県境に沿って東へ離れていく。
  3. 瀬谷区と旭区の区境を南下しているらしい。
  4. 帷子川及び大岡川の流域界と一致しているらしい。

 このうち上3点は古代の情報(@Say_no さんによるもの)で、最後のものは近世(1878年頃)の情報(@yucico さんによるもの)である。

 お二人は、それぞれ古代史と都市計画(及び流域)がご専門。そこで、不肖私が(素人のくせに)地形周りで少し調べてみた。

 調べるといっても大したことはしていない。産業総合技術研究所(地質調査総合センター)が公開している「シームレス地質図」を、基盤地図情報25000(縮尺25000レベルの地形図情報にほぼ同等のデジタル地図)に重ねて表示させ、地質条件を加味して眺めて見ようと思っただけである。
 シームレス地質図は、無許可で公衆送信可能状態にデータを置くことが認められていないので、公開できないかもと思ったのだが、ふと良い方法を思いついたので、結果として公開できることになった。

 最初の図はこちら:

 Quantum GISスクリーンショットである。左の方を見て頂ければ、使用したレイヤ一覧が表示されている。

レイヤ名タイプ凡例、説明
120121_kunisakaishape形式、自作武蔵国相模国の国境のベクタデータである。
AdmAreaBdrWMS基盤地図情報の行政界である。
RailCLWMS基盤地図情報の鉄道データである。
RdEdgWMS基盤地図情報の道路縁データである。
WLWMS基盤地図情報の水域データである。
BldAWMS基盤地図情報の建物データである。
Cntr100W/Cotr100/Cntr10WMS基盤地図情報の等高線データである。100m毎に太く表示される。
地質図_5339geotiff_UTM53GeoTiff形式ラスタシームレス地質図「東京」である。
1stMeshJGDshape形式MAPConcierge 謹製、標準地域1次メッシュの枠線である。
 シームレス地質図は、ライセンス上、無断配布できないことになっているが、QuatumGIS の場合、簡単に非表示に切り替えられる。ここで公開している画面には、シームレス地質図は名前しか出てこないので、ライセンス上も問題ないものと考える。  一番上のレイヤ以外は全て自由利用可能なものである。一番下のデータは、@mapconcierge さんのサイトから持ってきたものだが、これはシームレス地質図を正しい位置に貼り付けるためのアタリとして使用した。  ケチャップ色の線が、私が( @Say_no さん @yucico さんのコメントを元に)引いてみた武蔵国相模国の国境である。この縮尺では、海岸線、鉄道、100m単位の等高線、行政界線、1次メッシュ境界のみが表示されている。  画面中央やや上で線が水平になっているところが、国境が境川から東に離れる地点である。鎌倉を流れる柏尾川の流域全てを相模国としているので、東海道本線横須賀線が合流する東戸塚駅付近において相模国が北東に出っ張っているのがわかる。その南南東に少しだけ100mの等高線が見えるが、この付近に円海山がある。  続いて、拡大図である:  青い破線は境川の流路で、国境を兼ねている。ほぼ水平に伸びる赤い線は現在の都県境である。この付近は、7万年前よりも新しい段丘面に広く覆われている。境川は、その段丘面を流れており、ほとんど開析していない。青い破線から南側には、最近1万8千年以内の新しい地層が川沿いに堆積しているようである(地質図を表示させていないので、分からないと思うが)。ケチャップ色の線は、瀬谷区と旭区の境界であるが、この線は同時に下末吉面という約12万年前の海生層あるいはそれよりも更に古い堆積層と7万年前より新しい段丘面との境界を兼ねている。東側(下末吉面側多摩丘陵)が標高もハッキリ高くなっており、古代においても国境として機能していたと考えても違和感は少ない。 (注) @ogugeo 先生より「多摩丘陵の大半は、下末吉面よりももっと古い地層である」という趣旨のご指摘を頂きましたので、文面を少し修正しました。