玄天黄地

学生時代、箸にも棒にも掛からなかったアホの子が、やっと普通のアホになれるか?

ベクトル(回想)

 アホ歴史の3回目、ベクトルである。


 高校の授業では、位置ベクトルとそうでないベクトルを習う。どう違うのかについて、殆どの教諭はちゃんと教えることができない。また、大学1年生で線形空間を習う際に、それが位置ベクトルのことなのかそうでない(自由)ベクトルのことなのか、と聞いてもキチンとした答えは返ってこない。(あるいは、教授はキチンと答えたのかも知れないが、1年生では理解できない)
 → 答えは「座標とか成分とかが導入される前の段階では、その質問は意味をなさない」であるのだが。


 1年生で習う線形代数では、まだ体論を習う前なので、Rn として習うことが多い。せいぜい、K={R,C}として Kn として習う程度である。これが、多様体でもあるので、接空間 TRn が直ちに定義できるなどということは(1年次では)習わない。Rn をベクトル空間として見た場合とユークリッド空間として見た場合では言及できる性質の範囲が異なるのだが、そういうことを意識できた記憶はない。


 双対空間も、理解してしまえば何でもないが、汎函数(を施す演算)と内積(の演算)が形式的には類似の記法に見えるため、混同した瞬間にアウトである。自分は授業の最中に混同した質問をして、教授を怒らせたことがある。この年になってしまうと、あの頃いったい何につまづいていたのか、と不思議でならない。もっと一般的な空間を取り扱うための基本的な概念や操作を習っていただけなのに。有限次元の線形空間で困っているようで、どうして先へ進めようか。


 思うに、有限次元の線形空間においては双対空間は元の空間と必ず同型になることが、当時の私の足を引っ張っていたとしか思えない。その証拠に、Lp の双対空間は \frac1p+\frac1q=1 として Lq となることについて、証明はともかく、結論は何も違和感を覚えなかった記憶がある。


 いつから違和感がなくなったのかはよく分からない。関数空間の勉強を始めてしばらくして、上記のようなアホな感想は消えていたことだけは分かっている。
 ちなみに、正式なアホ脱出資格は、1)双対空間と元の空間を混同しないこと、に加えて、2)線形空間の正式な定義が、作用素を持つ加群の特殊例(作用素が体)ということを理解すること、の2点が必要である。私は長い間アホだったので(今でも?)、2)が頭に入るまでは多少の時間を要した。


 最近になって、違和感がなくなった理由がやっと簡潔な言葉で書けるようになった(遅っ!)。線形汎函数を施す演算からはノルムを導き出し得ない。ノルムそれ自体はもちろん汎函数なのだが、線形ではない。→今まではテンソル積に関する理解が足りなかったということね。私のレベルでは、函数解析でテンソル積という言葉を見ないからなんだね。