玄天黄地

学生時代、箸にも棒にも掛からなかったアホの子が、やっと普通のアホになれるか?

PF

先日、Foss4G Advent Calendar の一環で、「PostGIS にウチの DB を入れてみる」という話を書きました。

PostGIS に入れただけで PF を名乗るのは若干おこがましいのですが、外部の PF 群(たとえば瀬戸さんが紹介しておられる記事のようなものとか)と緩やかに、しかし、確実に連携しようと思えば、ウチの DB が昭和末期の使いにくい形式のままではよろしくない訳です。ウチの DB は、道路網をネットワークとしてモデル化したものですが、それを厳密に言うならば、ネットワークが一次元複体として数学的に完全に記述できていて、それが計算機空間上に完全に実装できていることが必要になるでしょう。これができていれば、PF 上で地理空間情報処理を行う場合に、データ不備によるエラーが発生しないことを保証できるようになります。現行は、そのレベルに至っていませんが、実データの構造が Old Fashined であるために検証が困難となっていることから、そもそも「道路ネットワークが一次元複体として完全に記述できているか」とか「その一次元複体は計算機空間上に完全に実装できている形としてファイルに表現されているか」みたいなことが 100% までは保証されていない現状にあります。

道路ネットワークは意外に変化していくので、データの幾何学的正当性を保証するに当たって、位置精度や位相精度と並んで、時間精度を保証することも重要です。時間精度が要求されるならば、あまり凝ったことはできません( B/C の観点で得策でない)が、その場合は位相精度を保証することが何よりも重要になると考えます。
実は、位置精度はあまり高いものを要求してもうまくいきません。工事図面は、相対位置は極めて高い精度で記述されていますが、絶対位置は必ずしも高くない場合があります。また、工事が完了して以降に累積している地殻変動は殆どの場合補正されていません。一方、地殻変動は局所的な相対位置を変えないので(厳密に言えば、地震が起きていない限り、局所的な相対位置の変化は通常計測の検出限界を大きく下回ります)、これは位相精度を保つことと非常に相性が良いことになります。結局、絶対位置は地理院地図と整合的であることが目安になると思っています。自動運転用の地図はもっと位置精度についても要求水準が高いかも知れませんが、個々の自動車から見てたかだか数百mの範囲内において相対位置が正確であれば良いのであって、運転中に自車の絶対位置を(毎秒20mとかで移動しているのに)数cm単位で気にしても意味がありません。むしろ、前車との車間距離がどうなのか、左のドアミラーは道路脇の電柱にぶつからないで済むのか、などの相対距離の方が遙かに重要です。

位相精度の方は、数学的に(実測することなく)完全に検証可能です。ただし、データ構造を完全に UML で記述でき、かつ、その通りに実装されていることが条件になります。この実装は、PostGISでならば相当レベル可能であろうと期待できます。なによりも、SQL で検証できる範囲において、データの検証を客観的かつ透明に実施できます。

IT の先端を走る人には、何を今更低レベルなことを言っているのだ、という感想を持つ人もいるでしょう。それでも、インフラ的なデータを(だから PF なのですね)現実的な価格で持続可能なサービスに持っていこうと思うならば、そしてそれを技術的に必ずしもハイレベルではない人材だけで回そうとするならば、この程度のことから始めるのが良い(このレベルでもハードルがそこそこ高い)と思うのでした。