玄天黄地

学生時代、箸にも棒にも掛からなかったアホの子が、やっと普通のアホになれるか?

3次元空間の構成

3月8日の記事で、道路が立体交差の場合は面倒なので端折る、と書いた。
横着をせずに考えてみることとすると、投影面は回転楕円体面であるべきだが、水平面は重力の等ポテンシャル面でなければ都合が悪いということをちゃんと取り扱わなければならない。両者をちゃんと区別しようとすると、3次元空間を地図投影及び測地系を考慮して構成しなければならないようだ。

道路のベルトモデルは、道路のネットワーク構造を維持するような位相空間として与えられるべきだが、「ネットワーク構造を維持する」としては、1次元複体として道路を表現した場合、その1次元複体がベルトモデルの部分位相空間になるべきだということでもある。で、道路は立体交差があるので、投影面上だけで考えているとうまくいかない。結局、3次元空間をまず構成して(単純なユークリッド空間ではダメ)、そこに道路を埋め込まなければならない。

ここでは、前段として、上記の事情を反映する3次元空間を構成してみる。実は、測量法で規定している【測量の基準:地理学的経緯度及び平均海面からの高さ】に対応する規定ぶりとなる。

 

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1.投影面

 投影面は、可微分2次元多様体であることを仮定する。

 これは、別の投影面に再投影した際に、図形がどの程度ゆがんでしまうか考える手段を与えるためである。一般的な地図投影は、回転楕円体面を平面の一部に移す写像として与えられるが、その際に Tissot の誤差楕円を計算することで、面積、距離、角度がどの程度保たれるかの指標とできる。回転楕円体面と平面とは同相にはなり得ないので、回転楕円体面から少なくとも1点を取り除いた残りを投影することになる。投影範囲は(この意味で)開集合になるが、その開集合の範囲では、投影写像は可微分でなければならない。投影写像のJacobianは大域的に単位行列となることはないが、Jacobianの単位行列からの乖離が少ないような投影写像が良い投影だと言われる。地図投影については、ここではこれ以上踏み込まない。
 ここでは、標準的な投影面として、次の2つを用いることとする:

①GRS80(以下、SAと記す)

 SAは、地球の形状を最もよく近似している回転楕円体である。測量法では地理学的経緯度の基準となっている。その形状は、物理学的に決定される。

ジオイド面(以下、SBと記す)

SBは、重力の等ポテンシャル面のうち、標高0mにひとしい「高さ」の面である。測量法では高さの基準となっている。(高さの厳密な定義は、測地学や地球物理学に任せることとし、ここでは踏み込まない。空間上の距離と、重力ポテンシャルの差とは、厳密には一致しない。)

 これらの面は、球面と微分同相であり、いずれも無限回微分可能な可微分多様体である。

2.投影面からベクトルバンドルを発生させる

 SAとSBは、3次元ユークリッド空間に埋め込んで考える。ユークリッド空間の原点は地球の重心とし、座標軸の1本は地球の回転軸(の時間平均として与えられる方向)のうち北極方向、2本目は経度0度の子午線面、3本目は東経90度の子午線面上に取るものとする。(地球の回転が時間的に一様ではないので、この表現は厳密ではないが)

 以下では、ユークリッド空間 E3 の点 ( x, y, z ) において R2= x2+y2+z2 とするとき、正数 p, q を p < 6300, 6400<q<6500 として p < R < q となるような範囲のみに制限した領域をE とする。

 このEに対して、①πA:E → SA と、②πB:E → SB という2つのベクトルバンドルを考える。射影 πA 及び πB は、それぞれ回転楕円体面への正射影と重力方向への正射影である。幾何学的には、πA の方がきれいな形をしているが、局所自明化としては πB のほうがしっくりくる。πB で局所自明化の結果得られる線形空間の基底方向は、鉛直線+水平面に一致するからである。

 πA:E → SA とπB:E → SB は図形としては一致しないが、両者は同型かつ同相である。E は、法ベクトルバンドルN(SA) 及びN(SB) を考えれば、SA×N(SA) あるいは E=SB×N(SB) の部分集合(部分位相空間)と考えることが可能である。

 両者は同一の図形ではないが、どちらも、E3 を局所座標系として持つことができるので、当然、C同型である。

 SA も SB も球面 S2微分同相であるので、切断 SA → E として SB を考えることができ、また、切断 SB → E として SA を考えることができる。この切断もそれぞれ SB, SA と書くこととすると、πA° SB も πB° SA も id にはならないが、実用上は id と見なして問題ない場合も少なくない。注目点の十分小さい近傍(サイズ100m未満の開球内とか)では id と見なした場合の誤差はほぼ検出されない。
 SA は、地図投影のために使用する。一方、SB は局所的に水平や鉛直を出したいときに使用する。

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 本題の、道路面を3次元空間(位相空間)の部分位相空間として定式化する前に長くなってしまった。続きは別の記事で。